2016/2/1/mon

解糖エンジン「酸素を必要としないエネルギー産生の話」

「解糖エンジンのエネルギー産生は、細胞の内部「細胞基質」で行われる一連の反応だ。ここで「細胞基質」という言葉がでてきたので、先に私たちの体の「細胞」という一生命単位について、簡単な説明を加えておこう。

ひとの細胞はおおむね直径3〜20μの大きさで、その外周は細胞膜と呼ばれる薄い脂質の膜に囲まれている。細胞の中心には細胞核と呼ばれる構造があり、なかにはヒト古来の生物から受け継いだ遺伝物質DNAが詰め込まれている。さらに、DNAはヒストンと呼ばれる特殊なたんばく質に巻きついてクロマチンとなり、これは細胞の分裂期に入ると凝縮して染色体を形作る。

そして、この核の周囲には細胞小器官(オルガネラ)と呼ばれる小さな生体部品が、そのあいだを埋めるように散らばって存在する。これらの細胞小器官には、たんぱく質を合成する「小胞体」やたんぱく質の仕分けをつかさどる「ゴルジ体」。さらにたんぱく質輸送の「分泌小胞」や酸素を用いたエネルギー産生を担うミトコンドリアがある。

こうして最後に細胞全体から核と細胞小器官をのぞいたものが、水分豊富な環境に囲まれた「細胞基質」と呼ばれる部分である。そして、この部分こそが「解糖エンジン」の場、そのものとなる。

解糖エンジンでは、まず食物から得たブドウ糖1分子を代謝してピルビン酸という中間物質に変化させる工程を行う。すると、このピルビン酸を生成する過程でATP2分子とNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質がともにつくりだされる。

この解糖エンジンの利点は、急なエネルギー需要が生じたときに、酸素のあるなしに関わらず瞬時にATPを作り出せる点にある。すなわち応急的に瞬間対応するエンジンとしても、その機能を備えているといえよう。ただ不都合な点は、産生されるエネルギー量がブドウ糖1分子あたりATP2分子と少なく、持久力としての長時間運用には適さないことだ。

もともとヒト古来の細胞が酸素のない環境でも生き延びていた性質からも、「解糖エンジン」はそのエネルギー産生において酸素を必要としない。しかし、生み出せるエネルギー量が非常に少ないことから、おそらくヒト古来の生物は目に見えてわかるような運動能力は持ち合わせていなかったことが容易に想像つくのである。」

今回は、ミトコンドリアでの内容ではありませんが、ミトコンドリア以外のエネルギー産生の仕組みを把握することは非常に大切なことです。「解糖エンジン」は、少ないエネルギーしか産生しませんが、酸素を必要としなく、瞬発的なエネルギー産生が可能です。

このことは、後述するミトコンドリアのエネルギー産生の仕組みと全く逆といっても良いでしょう。

解糖エンジンとミトコンドリア・エンジンがあることで、うまく機能しているとも言えますね。

また、ミトコンドリア・エンジンがなかった時代は、解糖エンジンだけですので、目に見える動きができなかったということは、植物のような状態だったのでしょうか。

体のことは、知れば知るほど面白いですね。

今回もミトコンドリアについては、多く語られませんでしたが、ミトコンドリアを理解する上で重要な、エネルギー産生システム(解糖エンジン)でしたね。


第2回目「ミトコンドリア革命」を読み解くコーナーでした。
出典:ミトコンドリア革命」(宇野 克明著:東邦出版)

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