2016/2/1/mon

ミトコンドリア・エンジン
—酸化的リン酸化というエネルギー産生

解糖エンジンで作りだされたピルビン酸は、ミトコンドリアの中にある酵素によってアセチルCoAと呼ばれる物質に変化していく。しかしこのままでは必要なエネルギーの大半がアセチルCoAという物質の内部に蓄えられたままで、すべてを活用しきれない。そこでこのアセチルCoAは引き続きミトコンドリアの内部にある反応サイクル「クエン酸回路」に運ばれ、ここで生じた炭素化合物から二酸化炭素を取り出して廃棄する。

すると次に生じた水素原子(H)がNADという物質と結合し、最後にミトコンドリアの内膜にある「呼吸鎖(電子伝達系)という装置に入り込むことになる。ここで水素原子は水素イオン(H+)と電子(e-)に分かれ、両者はそれぞれ別々の経路を進んでいく。まずは、電子の動きに注目してその反応をみていくとしよう。

単独で行動するようになった電子はミトコンドリア内膜に多数埋め込まれた「呼吸鎖」とい装置の中を電子の運搬体とともに端から端まで受け渡されていく。

呼吸交差複合体Ⅰ→ユビキノン→呼吸酵素複合体Ⅲ→シトクロムC→呼吸酵素複合体Ⅳまでの経路を順番にたどるわけだ。このときそれぞれの運搬体は電子を受け取って還元されると、次にまた電子を渡して酸化された状態に戻る。こうした電子を得る(受け取る)、失う(渡す)、といった酸化還元反応が連鎖的に続き、最後に電子も呼吸酵素複合体Ⅳを通って内膜側に戻ってくることになる。

こうして戻った電子は、内膜側にある水素(H)と酸素(O)とに反応して水(H2O)になり、それによって反応が集結する。余談だが、呼吸酵素複合体ⅠとⅢの間を受け持つ電子運搬体「ユビキノン」は、一時話題となったサプリメント成分「コエンザイムQ10」のことである。

こうして呼吸鎖という装置を電子がサーッと流れると、その移動によっても化学エネルギーがうみだされていくということになる。

次は水素イオンの動きに注目してみよう。

このように、電子が移動してエネルギーを生じると、それを原動力にして水素イオンがミトコンドリア内膜の内側から内膜の外側(膜間腔)にくみ出されていく。するとミトコンドリア内膜を隔てた膜間腔に水素イオンが蓄積し、膜の内側と外側でその濃度と電荷にさいが生じることとなる。こうした膜を挟んだ濃度・電荷の差が、次なるATP合成の原動力として利用されるのだ。

少しややこしい話になったが、大丈夫だろうか。一つ一つの名称を覚えようとすると、急には理解しにくいかも知れない。ひとまずここではミトコンドリア内膜にある呼吸鎖と呼ばれる装置を電子が移動するとエネルギーが生じ、水素イオンが膜の外側に押し出されるのだ、と理解してもらいたい。

こうして水素イオンが呼吸鎖を隔てた膜の外側に押し出されて蓄積すると、次は同じくミトコンドリア内膜にある「ATP合成酵素(ATPアーゼ)」という装置のトンネル部分を通って内膜側に戻ってくることになる。

この装置はキノコを逆さまにしたような形をしていて、その構造はまさに「ミクロの水車小屋」である。そして、ちょうどこの部分を水素イオンが通過することで、水車が回り、その物理的エネルギーによってATPが生み出されていくのである。ちなみに、こうした「ミクロの水車小屋」ATPアーゼは、一つのミトコンドリア内膜に、およそ数万個が散らばっている。

こうして、解糖エンジンからミトコンドリア・エンジンへの経路をたどると、ブドウ糖1分子につきATP38分子が生み出される。しかも、得られるエネルギーは、ぶどう糖1分子につきATP2分子しか生み出さない解糖エンジンだけの時の19倍にもなり、その余裕がハイブリッド化した私たちの生命活動に大きな影響をもたらした。こうして、おそらく現在の私たちの体型発達と行動力につながったであろうことは、容易に想像がつくのである。


今回はとても複雑でしたね。でも、考えてみてください。このような複雑で繊細なことを私たちの身体は、無意識のうちに行っているのですよ。人体の神秘ですね。

簡単に、本当にざっくりいうと。

1.解糖エンジンで出来たアセチルCoAがクエン酸回路に入る。

2.ここで生じた水素原子(H)がある物質と結合し、最後にミトコンドリアの内膜にある呼吸鎖に入る。

3.ここで水素原子は水素イオン(H+)と電子(e-)に分かれ、別々の経路を進む。

4.(電子e-)
電子の受け渡しを(酸化還元反応)が連鎖的つづく。電子が流れることによっても化学エネルギーが生み出している。

5.(水素イオンe-)
①電子が移動してエネルギーを生じると、これを原動力にして水素イオンが ミトコンドリア内膜の内側から内膜の外側にくみ出されていく。
②ミトコンドリア内膜にある「ATP合成酵素(ATPアーゼ)」という装置のトンネル部分を通って内膜側に戻ってくる

ATPアーゼは、水車のようになっており、これが回りATPを発生させる。


ざっくり説明するとこのような感じですね。水力発電所のようなことが、体内でも行われているということです。なんだか、神秘的ですよね。

そして、ATPアーゼはミトコンドリア一つに対して、数万個散らばっているというのが驚きです。体内のミクロの世界では凄い工場ができているのですね。

この凄さがイメージできる動画がyoutubeにアップされていました。

私たちの体内のミトコンドリアでどのようにエネルギーが作られているか、少しイメージがついたとでしょうか。


第2回目「ミトコンドリア革命」を読み解くコーナーでした。
出典:ミトコンドリア革命」(宇野 克明著:東邦出版)

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